【書評】『ボーイング747を創った男たち』クライヴ・アーヴィング
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ジャンボジェットの愛称で親しまれるボーイング747は、1969年に初飛行してからというもの、半世紀近くが経った今でも世界中の空を飛びまわっている。あのずんぐりむっくりした独特のフォルムに愛着を持っている方は多いのではないだろうか。僕もその一人である。
この本は、そんなベストセラー機であるボーイング747がいかにして開発されたか、を綴った本だ。
本書はボーイング747の開発にかかるエピソードだけに話題を限定しているわけではない。
書き出しは、第二次大戦前のアメリカの航空機開発事情の解説である。
中でも、興味深かったエピソードは下記の2つ。
①私企業・大学・政府機関との間で人材の交流が盛んだった
⇒カリフォルニア工科大学(カルテック)やNACAといった政府機関の風洞実験装置を、ボーイングやダグラスといった機体メーカーのエンジニアが利用できた。また、優秀な学生や職員をエンジニアとして引き抜くことができた。
・ただし、公共機関の装置を利用できた反面、ライバルのダグラス社に新型機の情報を盗まれるというデメリットもあった。
②カルテックの風洞実験装置を共用したことで情報流出を招いたことを反省し、ボーイング社は自前の大規模な風洞実験装置を建築。銀行融資と増資による資金調達でこれを可能にした。
⇒自前の風洞実験装置を手に入れたことで、同社の研究開発体制は飛躍的に進歩した。
①については、アメリカの航空機産業の隆盛は、「産・官・学の連携」がうまくいった好例だと言えよう。
また、②については、ファイナンスが企業の発展に大きく寄与した一事例として挙げられよう。