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【書評】國重惇史『住友銀行秘史』~プロローグ

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ツイッター金融クラスタ・不動産クラスタを中心に話題になっている『住友銀行秘史』。

その余りにもエグい内容から「おなかいっぱい」「胸やけする」などの読後感を持つ人が続出しています。私も同感です。

 

内容については、既にツイッタラー諸賢のつぶやきが纏められているので、あえて屋上屋を重ねるようなことはしませんが、

「プロローグ」だけを読み進めた中で感じたことを2点。

※「プロローグ」だけで十分おなかいっぱいになれます

 

①平和相互銀行を買収するエピソード

 

『私は、平和相銀を信用不安に陥れて、住友銀行がこれを救済するというシナリオを考えていた」(p21)

 

⇒銀行を買収するのに「信用不安」をもってする、というのは、銀行員としての倫理観を欠くこと甚だしいと感じました。

いうまでもなく、銀行は信用によって成り立つ金融経済を根本から支える存在であり、銀行そのものが信用不安を起こすということは決してあってはならないことです。

「銀行を愛してやまないひとりのバンカー」(帯)

がみずから銀行ビジネスを否定するような行為を企てるというのは、さすがに禁じ手ではないでしょうか・・・

 

②「優秀な営業マンを真似した」エピソード

「支店のみんなに紹介もした」との記述に留まりますが、おそらく「紹介」に留まることはなかったと思われます。

その優秀な営業マンが持つノウハウとは下記の通り。

 

『カリスマ営業マンのやり方は・・・自分が風呂に入っている間に奥さんが(必要事項を吹き込んだテープの)テープ起こしをしてくれる。・・・それを見て一日を振り返り、明日の行動計画を立てる」(p27)

 

どこからどう見てもサービス残業なのですが、私が興味を覚えたのは、この「奥さんに仕事を(無償で)手伝ってもらう」というモデルが、先日読んだ『稟議と根回し』という本に出てくる「会社とは家族のような共同体である」という思想にとてもフィットした行動であることです。会社=家族なのだから、本来の家族であるところの奥さんが、旦那さんの仕事を手伝うことは自然なことだったのでしょう。

 

バブル時代は、今とはそうとうな隔たりのある時代だったという事ですね。。。

 

細かい違和感を挙げるとキリがありませんが、

総じて、「俺ってこんなに優秀なんだぜ!」「住銀のために(ひいては日本のために)身を粉にして働いたんだぜ!」

という自己顕示欲の香りが行間から漂ってくるのが何とも言えないですね。

 

何はとまれ、

現在の我が国における銀行の在り方を理解する上で重要な図書であることは間違いないと思うので、

健康を害しない程度に読み進めていきたいと思います。