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まめちの本棚

自分が「面白い」「皆さんに知ってほしい」と感じたことを書き記すブログです。※投稿内容は個人的な意見の表明に過ぎず、所属する組織の見解を反映するものでは一切ありません。

【書評】『残念な旅客機たち』

何事につけても、成功者の語りから得られることは少なく、失敗経験から得られる学びは大きいものです。

『残念な旅客機たち』というタイトルからは、そのような有益な学びが得られそうな雰囲気が漂ういいタイトルだと思います。

本書を一読して認識したことは、航空機製造ビジネスの難しさです。

航空機は、開発を始めてから実際に販売するまでのサイクルが非常に長く、その間には様々なリスクが待ち受けています。

本書に書かれているエピソードから、そのリスクを列挙すると、大きく分けて以下の4点が挙げられます。

◆航空機開発の3大リスク

①エアライン側(顧客側)の需要が変化し、開発中あるいは開発した機体が顧客のニーズに合わなくなってしまうリスク

②技術的問題がクリアできず、開発が大きく遅延してしまうリスク

③他の航空機メーカーに先を越され、開発中の製品が陳腐化してしまうリスク

これらのリスクが障害となり、先進的な技術やコンセプトを備えていたのにも関わらず、マーケットに受け入れられずひっそりと世から消えていった旅客機が数多く存在することを、本書は豊富な実例を挙げて解説しています。

◆4大リスクの実例

昨今の航空業界で話題となっている

A380の販売不振」

MRJの開発」

に、先述したリスクを当てはめてみると、

大型機エアバスA380ボーイング747の販売不振は①のリスク、すなわち

「ハブ&スポーク」ではなく「ポイント トゥ ポイント」のトレンドに対する不適合

日経新聞の報道によると、ボーイングは日本と韓国、台湾を合計した「北東アジア」地域におけるボーイングのジャンボ機「747」やエアバスA380」を含む超大型機の需要は先細りしていき、かわりに中小型期の市場が拡大していくと予想しています。

MRJの開発は②と③のリスク、すなわち

度重なるトラブルによる開発遅延、ライバル機との激しい競争

…に、それぞれ晒されているといえそうです。

東洋経済オンラインの参考記事:

「三菱重のMRJと海外のライバルを徹底比較 老舗2社との勝負が成功を左右」

※航空会社からみた、旅客機の購入にまつわるリスクについて考える際はこちらの本が参考になります。

機材計画という角度から航空会社と旅客機について知ることができる本です。

買うべき旅客機とは? (航空会社の機材計画のすべて)

なお、②と③については、ボーイングが1960年代に開発を断念した「ボーイング2707」という高音速旅客機があてはまるでしょう。

来たるべき超音速旅客機時代に備え、当時のケネディ大統領の肝いりで開発が開始されたこの超音速旅客機は、

莫大な国家予算や人員を投入したにもかかわらず開発が難航。

国家予算の削減圧力や環境破壊に対する懸念の強まりから、ニクソン大統領の時代に一機も完成することなく開発中止が決定された、

という経緯を辿った、いわば「流産した」旅客機です。

(もっとも、2000年代に退役するまで赤字を垂れ流し続けたコンコルドを考えると、早めに開発を打ち切ったのは正解だったと言えるかもしれませんが・・・)

とはいえ、空の旅は人類の見果てぬ夢であり、これからもより早く、より遠く、より安く、空の旅を楽しむための研究は続いていくことでしょう。

いち金融マンの自分としては、こういう具体的なモノに触れるビジネスができて羨ましいな、と思ってしまいます。