まめちの本棚

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『狭小邸宅』を読む女子会()~議事録その①

 

女子会()議事録

■課題図書:新庄耕『狭小邸宅』(集英社、2015年)

■開催日時:2017年3月11日(土)9:30~11:30

■開催場所:太陽の光が降り注ぐ、表参道のオシャレなカフェヤニ臭い西日暮里のルノアール

■参加者:あや、けいこ、しほ、まめち(※仮名です)

 

■議事:

●まめち:本書は、当初は成果を出せずにくすぶっていた若手不動産営業マンが、ある物件を販売したという成功体験をきっかけに上司に認められ、次第に業績を伸ばすとともに、人格を変貌させていく様を綴った小説である。

 

まず念頭に置いておきたいのでは、本書の舞台である不動産販売会社「フォージーハウス」の業態である。

一口に不動産業といっても様々な業態がある。本書では明確にされていないが、「フォージーハウス」は所謂「建売専門業者」であると推測される。底地を仕入れ、建物を工務店に建築させ、土地・建物をいったん在庫として自社が抱え、最終的な顧客である一般個人に販売する業態である。

 

この業態の場合、建売専門業者は常にタイトな資金繰りに追われ、在庫である一戸建て「狭小邸宅」を一刻も早く販売する非常に強いインセンティブが発生する。この構造が、主人公の松尾をはじめとした営業マンに強烈なノルマを課す根源的な理由であると推測される。

 

●しほ:社長が「蒲田(蒲田に建築したものの売れずに不良在庫化している物件)を売った営業マンにはボーナスを100万円出す」と激を飛ばしていた理由も納得できる。

社長も厳しい資金繰りに汲々としており、取引先や銀行筋に頭を下げて回っているのだろう。そのイライラを部下にぶつけているのではないか。いずれにせよストレスフルな業態である。

 

●あや:本書で描写されている労働環境は、常軌を逸していると言っていいほど過酷なものだ。

なぜ辞職しないのか。

 

●まめち:不動産の営業マンは一般的に出入りが激しいが、このような過酷な業界に留まり続ける原因として、給与の仕組みが一因ではないか。

一般的に不動産の営業マンの給与構造は固定給+歩合給という構造で構成されており、売れば売るほど歩合給が加算され給与水準が上がる仕組みである。

また、本書で描写されているように、低い学歴の人物であっても結果次第で相応のリターンが得られるという給与体系でもある。

もっとも、「住宅ローンを組んでしまった」「不動産業界以外で働くことなんて想像もできない」などの事情から、いやいやながら働きづけているという事例もあろう。

 

●しほ:本書のラストでは、松尾の営業手法が行き詰まり、今までのような成功をおさめ続けられなくなる姿が示唆されている。この理由は何であろうか。

 

●まめち:顧客のニーズに沿った物件を提案するのではなく、「とにかく物件を押し込むべし」という松尾の営業スタンスが限界に達したためと解釈している。

 

●しほ:松尾は判断に悩む顧客に、物件や周辺環境など、いい点や悪い点を織り交ぜて説明している。「顧客のニーズに沿った物件を提案していない」といえるのか。

 

(続く)