『狭小邸宅』を読む女子会()~議事録その②
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●まめち:確かに松尾は顧客に対し「背中を押し」てはいるものの、顧客が「住宅に真に求めているもの」が何か、に寄り添っているようには見えない。
むしろ、
「いたずらに多くの物件を紹介させる」
「路地を走り回り、地理の詳しさをアピールする」
「他にライバル客がいるかのように嘘の電話をする」
など、小手先の技術、あるいは不誠実な手法を用いて強引に家を買わせようとしている。
●しほ:営業手法の是非には議論があるところであるが、
松尾が、間取りや耐震性などといった不動産そのもの価値ではなく、値段や周辺環境といった「属性」に着目した売り方をしている見える。
●けいこ:それは当然であろう。不動産を買うということは、「土地と建物を買う」ということのみならず、「ライフスタイルを買う」という側面もあるからだ。
さらに言うと、不動産の購入とは自分の家族や人生のある種総決算的行為であり、
そこには単なる「ものを買う」以上の意味合いが隠れている。
●あや:「VERY妻」や「港区マダム」が血道を上げている「マウンティング」の手法のひとつに、
「タワーマンション高層階の自宅にてホームパーティーを催す」
というものがあるそうだ。
不動産が「社会的立ち位置」やアイデンティティと深く結びついていることを示唆するエピソードといえよう。
●まめち:私が昔銀行で住宅ローンの仕事をしていた際に聞いた話だが、
希望する物件のローンが通らない顧客が「情けない」と家族や営業マンの前で男泣きをしたことがあるそうだ。
人生における高い買い物といえば、解りやすい所だと自動車があるが、オートローンが通らなかったからといって泣く男はいないだろう。
住宅の購入が人格と結びついていることを示唆するエピソードとしてご紹介した。
●けいこ:住宅購入がライフスタイルや価値観を色濃く反映するものであるのはなぜだろうか。
自分や家族が住む家は、必ず購入しなければならないものではない。賃貸住宅でもよいではないか。
●あや:「男は家を買ってこそ一人前」という意識は地方を中心にまだまだ根強い。
もっとも「家は買って住むもの」という概念は多分に近代日本が成立して以降の「創られた伝統」であるという気もする。
●まめち:このマインドが形成された経緯は今後調査していきたい。
(続きます)