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東京都美術館で開催中!ブリューゲル「バベルの塔」展を観てきたよ

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こんにちは、まめちです。

今日はハブルの塔バベルの塔の話をします。

バベルの塔」展全体の感想

 東京都美術館で開催されている『ブリューゲル「バベルの塔」展』を観てきました。

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ピーテル・ブリューゲル1世<<バベルの塔>>1568年ごろ 油彩、板 ボイマンス美術館蔵

目玉は上掲の、ピーテル・ブリューゲル1世による「バベルの塔」(1568年ごろ)です。

他には、世界に20数点しか現存しないとされるヒエロニムス・ボスの作品や

 

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ヒロニムス・ボス<<放浪者(行商人)>>1500年頃 油彩、板

ブリューゲル1世の手がけた「バベル」以外の有名な作品

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ピーテル・ブリューゲル1世<<大きな魚は小さな魚を食う>>1557年、エングレーヴィング

…など、ネーデルラントの作品を数多く大変することができ、大変満足しました。

バベルの塔」を観た感想

意外と小さい

公式図録に原寸大の「バベルの塔」 のポスターが付録としてついているのですが、サイズを文庫本と比較してみると意外に小さいことがわかります。

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一方で、この小さい絵の中には様々な人や物が描かれています。

石工、人夫、船の乗組員、煉瓦工etc...らせん構造の3層目には、赤い天蓋が見えます。建築現場を視察にきた「エラい人」でしょうか。

絵の中に緻密に書き込まれたキャラクターは、様々な人間模様や、物語の広がりを感じさせ、私たちの想像力を掻き立ててやみません。

「神の怒りに触れた」のはなぜか?

なぜ、バベルの塔は倒壊の憂き目にあったのでしょうか。

「天まで届く建築物を造ろうとした人間の傲慢さが神の怒りに触れたからだ」とされていますが、ではなぜ人工物が天にまで届いたら神が怒り出すのでしょう。神が「おうおう、お前らよくやったな」くらい言ってくれてもよさそうなものです。

まずは旧約聖書の、バベルの塔について言及されている箇所(創世記、11章)に、どう書いてあるのかを確かめてみることにしました。

11:1全地は同じ発音、同じ言葉であった。

11:2時に人々は東に移り、シナルの地に平野を得て、そこに住んだ。 11:3彼らは互に言った、「さあ、れんがを造って、よく焼こう」。こうして彼らは石の代りに、れんがを得、しっくいの代りに、アスファルトを得た。

11:4彼らはまた言った、「さあ、町と塔とを建てて、その頂を天に届かせよう。そしてわれわれは名を上げて、全地のおもてに散るのを免れよう」。

11:5時に主は下って、人の子たちの建てる町と塔とを見て、

11:6言われた、「民は一つで、みな同じ言葉である。彼らはすでにこの事をしはじめた。彼らがしようとする事は、もはや何事もとどめ得ないであろう。

11:7さあ、われわれは下って行って、そこで彼らの言葉を乱し、互に言葉が通じないようにしよう」。

11:8こうして主が彼らをそこから全地のおもてに散らされたので、彼らは町を建てるのをやめた。

11:9これによってその町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を乱されたからである。主はそこから彼らを全地のおもてに散らされた。

口語訳聖書 - 創世記

これを読んでもよくわからないのですが、英文で読んでみると、何となくわかってきました。

Then they said, “Come, let us build ourselves a city, with a tower that reaches to the heavens, so that we may make a name for ourselves; otherwise we will be scattered over the face of the whole earth.”

Genesis 11 - The Tower of Babel - Now the whole - Bible Gateway

「それから民はこう言った。『さあ、力を合わせて街を作ろう。街には天界に届くほどの塔を作って、我々の名を世に知らしめよう。さもなくば、我々は全世界に散らばってしまうだろうから』」 (まめち訳)

"the heavens"は、神々の住まうところという意味になるようです。要は

「オドレらワイの被造物の分際で、ワシの家を覗き込みに来ようとはエエ根性しとるの、その腐った性根叩き直したる」

という風に神が理不尽にキレ出した、という事のようです。

旧約聖書の神はしょっちゅう理不尽にキレ出す、と佐藤優氏の本に書いてありましたが、要は合理的な理由はなく、神の機嫌を損ねてしまった、ということになるのでしょうか。感情的にキレ出すタチの悪い上司みたいで、困ったものですね。

バベルの塔」はなぜ海沿いに建っているのか

ひと目見てわかるように、バベルの塔は海に面して建っています。塔の隣には港が据え付けられ、多種多様な船が係留されています。これらは何の船なのでしょうか。

私の想像では、バベルの塔に必要とされる建築資材その他もろもろの物資を運搬する船ではないでしょうか。

今も昔も、大量の物資を低コストに運搬する最良の手段は水運だから、というのが推察の理由です。

バベルの塔の主要な素材である煉瓦は、絵の左手奥に描かれているレンガ工場で作られ陸送されているようですが、おそらくその他の建築資材(木材、モルタル、人夫の食料や日用品など)を運搬するのに船を使っていたのではないでしょうか。

とするならば、この超巨大建造物を海の近くに建築するのはきわめて合理的な発想といえるでしょう。ブリューゲルがそこまで意識していたかは分かりませんが…

※ちなみに、ブリューゲルは非常に卓越した船に関する知識を有していたそうです。単にブリューゲルが船の絵を描き込みたかっただけかもしれません。

参考文献

◆ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲルバベルの塔」展公式ガイドブック

◆『アスタロト

アスタロト (1) (秋田文庫)

アスタロト (1) (秋田文庫)

 

 『パタリロ!』 『翔んで埼玉』などで有名な魔夜峰央氏による作品です。ボスやブリューゲルの絵に出てくるような怪物に似たイメージのキャラクターが多数登場します。これらの画家の世界観が好きな方には非常にオススメです。

◆『コンテナ物語』

コンテナ物語

コンテナ物語

※船は何を運んでいるのか?には本書からヒントを得ました。 

 今日はこのへんで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。