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【日経新聞評】『ウシジマくん』『カイジ』は金融教育向きか?-やっぱり『ナニワ金融道』でしょう

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2016年10月31日の日経新聞の連載「読む!ヒント」に

「お金を語ろう、考えよう」

というタイトルの記事が載っており、

興味を覚えて読んだところ、少し違和感を覚えたのでブログを書きました。

 

本文中に

『若い世代がお金に意識を向けるきっかけとして、例えば漫画も悪くない。(中略)『闇金ウシジマくん』『賭博黙示録カイジ』なら読んだことがあるかもしれない。安易な借金や保証人になることの怖さを教えてくれる』

との記述があり、少し違和感を覚えました。それは、

 

闇金ウシジマくん』や『賭博黙示録カイジ』は、

「安易な借金や保証人になることの怖さ」を知るために相応しいテキストだろうか?

 

という違和感です。

 

闇金ウシジマくん』の怖さの源泉は、アウトローや精神異常者が自分の身にもたらす

身体的・直接的な危機であります。

 

違法薬物に手を出して廃人になる女性のエピソードや、

怪しげなビジネスに手を出した結果破滅し、拷問を受けるチャラ夫の話などがその代表で、

金銭トラブルをきっかけとして、生命維持に直接的な脅威を及ぼす事態を引き起こすエピソードが多いですよね。

 

賭博黙示録カイジ』も、安易な借金の怖さ云々というよりは、

次々と襲い掛かる修羅場を、主人公のカイジが機転を利かせて切り抜ける様や、

その修羅場における巧みな心理描写などが魅力であり、

「お金に意識を向ける本」としては少しピントがずれているかなと思います。

 

では何ならいいのか、というと、

私はナニワ金融道がベストなテキストであると考えます。

 

ナニワ金融道』の怖さは、法律や社会制度といった、社会的に是認されているシステムが、

使い方次第でわが身を破滅させうるものである、ということを実に様々な角度から教えてくれる、ということです。

 

(主人公・灰原をはじめとした登場人物が暴力を加えられる描写はあるものの、

闇金ウシジマくん』の描写よりははるかにマイルドです)

 

本作では「うっかり」「人助けのつもりで」「知らないうちに」様々な書類に署名・捺印した結果、

経済的に破綻してしまうエピソードが数多く出てきますが、

 

そこからは

印章の押捺や署名、連帯保証人制度、約束手形などの、本来は人の権利を守るために存在する社会制度が、

使いようによっては自分を破滅に追いやる凶器と化す

 

という恐ろしさを学び取ることができます。

 

本連載のターゲットは18歳~22歳くらいの大学生のようです。

中高生ならば『闇金ウシジマくん』『賭博黙示録カイジ』あたりでもいいと思うのですが、

20歳を超え、成人として法律行為を行える年齢の人が読むには、『ナニワ金融道』のほうが相応しいのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

※福元氏の作品ならば、『カイジ』シリーズよりも『銀と金』のほうが、金融教育という観点ではすぐれていると思います。