インデックスファンドの「隠れコスト」論争をめぐるまとめ
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久しぶりにブログを更新します。
4月14日(日)からその日の終わりごろにかけて、インデックスファンドの「隠れコスト」というテーマで、TLが大いに盛り上がりました。
「パッシブファンドのコスト」という非常にニッチなテーマをめぐり、運用業界の実務担当者(と思われる)方による数々の興味深い投稿がなされ、大変勉強になりました。(これこそTwitterの魅力ですね!)
このような貴重な知見を、Twitterのサーバーの中に死蔵してしまうのも勿体ないと思ったので、ブログで纏めることにしました。
※もし問題がありましたら適宜対応しますのでご連絡ください。
- 発端
- 事務負担が非常に大きい
- 取引コストを厳密に分離する方法がそもそもない
- ファンドの繰上償還は実務上不可能
- パッシブファンドの最大のリスクは流動性
- フロントランニングにかかるコスト
- 関連書籍
- 参考記事
発端
発端は、「青井ノボル」氏によるこのブログ記事にかかるツイートです。
【ブログ更新】インデックスファンドの隠れコストがあるとは知りませんでした。投資信託は奥が深いですね。 インデックス投資で長期縦走へ : インデックスファンドにおけるコストの実態を考える https://t.co/ihbCUvfHIc
— 青井ノボル (@sindanindex) 2018年4月14日
この記事の要点は下記の通りです。
- インデックスファンドには信託報酬や売買委託手数料、税金などの他に、詳細が開示されていない「隠れコスト」がある
- 「隠れコスト」には、バスケット取引にかかる手数料などが挙げられる。この取引にかかるコストは、本邦のルールでは開示しなくてよいことになっている。
- 個人投資家には真のコストを正確に把握する術はない。フィデューシャリー・デューティーを日本に根付かせるためには、投信のコスト開示については更に厳格なルールで運用すべきかもしれない
この記事に対するShen氏のツイートがこちら。
さすがにインデックスファンドはベンチマークとそんなに乖離してなければ気にしなくていいんじゃないかな。運用している当人も綺麗には分離出来てなかったりするし。
— Shen (@shenmacro) 2018年4月14日
それよりもインデックスファンドは取引コスト等々で必ずインデックスをアンダーパフォームするとわかって投資しないとだめだと思う。 https://t.co/KdbefBaQPg
このツイートを見て、私がインデックスファンドの運用を巡りツイートしたことで、話題が広がっていったようです。
日興アセットが割と「攻めた」スライドを作ってるのでご紹介しときます。https://t.co/tbLJblYNq7 pic.twitter.com/ranMBIszEs
— まめち (@m0mch1) 2018年4月14日
ファンド運営のコストの「不透明さ」をあげつらうのは結構ですが、細かく突き詰めだすとキリがないんですよね。
— まめち (@m0mch1) 2018年4月14日
あと、細かいことを追求し始めると「コストを発見するためのコスト」も加速度的に増えていくと思われます
以下に、インデックスファンドの抱える問題点を指摘したツイートを整理して紹介します。
事務負担が非常に大きい
完全コピー型のインデックスファンドには裏でアホみたいな枚数の伝票を書いてる労働力が存在することと、得られるフィーに対してオペレーションでの損失リスクがデカすぎることもお願いします。 https://t.co/gwRN4kwWyY
— ホッピーキャピタリスト (@FM69991468) 2018年4月15日
手前味噌ですけど日本のファンドオペレーションは一部を覗いてほんとに真面目なんで完全法のインデックスファンドとかめっちゃ細かい作業やってるんすよ。伝票ミスを海外ブローカーに連絡したら「あいつら神経症だから早く処理しようぜ」ってメール回りますからね。なぜか僕も宛先に入った状態で。
— ActiveIndex (@ActiveIndex) 2018年4月15日
インデックス投信には、アクティブとは質的に全く違う負荷やコストがある。何百という指数構成銘柄を全て持ちながら指数に限りなく近づけるにはそれなりの人員配置が必要。事務ミスのリスクも高く、システム投資負荷も大きい。アクティブと違ってコストが安くあるべきだと言われたら俺は全力で否定する
— moraimon (@moraimon) 2018年4月15日
インデックス投資は何も考えずにただ指数と同じことをしてればいいんだろ、人も少なくコストも安いはずだろ、という思い込みが投資家にはあるのかもしれないが、現場に行ってみてみなよ。彼らは神経すり減らしてるよ。人気のない部署の割には負荷ばかりかかって、リスクは事務ミスのダウンサイドのみ。
— moraimon (@moraimon) 2018年4月15日
指数には、リバランスに伴う売買手数料、カストディフィー、信託報酬と言う名の人件費は一切含まれていません。そして指数プロバイダーは、指数の名前を使うことのライセンスフィーを要求します。これらを合わせるとファンドサイズにもよるけど二桁bpsは指数を下回ります。
— moraimon (@moraimon) 2018年4月15日
ならば大きなETFを買おう!となりますが、でかいETFほど調子に乗って信託報酬をぼったくります。isharesとか70-90bpsとかだった記憶。
— moraimon (@moraimon) 2018年4月15日
結論は、ETFやインデックス投信のコストにいちいち目くじらを立ててもあまり意味がないと言うことです。エマージング投信なんかカストディだけで二桁bps負けます。これは避けようがない。価格交渉力もないから下げることなんか無理。
— moraimon (@moraimon) 2018年4月15日
インデックスファンドがレッドオーシャンなのはそうですが、GPIF公表資料だと管理運用委託手数料率0.03%とかなんですよ。ご奉仕するにゃん!って感じですよね。https://t.co/JqZCjOpX18 pic.twitter.com/fuqQWGFC47
— さわディアナポリス (@sawadybomb) 2018年4月15日
あくまで個人的な意見ですが、パッシブ運用の世界は規模の勝負なので、ほぼほぼ勝負が決まっていて、ビジネスとして生きていけるのはほんの一握りであとは赤字にならないようにインフラとして必要な信託とかの運用部門で20年もしたら純粋な国内のパッシブ公募投信は死滅するのではないかと思ってます。
— ActiveIndex (@ActiveIndex) 2018年4月16日
取引コストを厳密に分離する方法がそもそもない
債券の取引コストとかはこれまで分離する方法もなかったんで…。そこらへんを分離するとなるとトレーディング時に株の取引種別(個別・バスケット)の取引コストを分離、債券も受け渡し価格に含まれるコストを分離するシステム開発が業界全体で必要になるのでインデックスファンドは値上がりするかも。 https://t.co/WqYrQZhJCQ
— ActiveIndex (@ActiveIndex) 2018年4月15日
ファンドの繰上償還は実務上不可能
運用会社がインデックスファンドを繰上償還するには受益者の三分の2の賛成を得るため全員に通知します。しかし顧客がどこの誰かは運用会社ではなく販売会社しかしりません。そして販売会社は通知の事務負担半端ない割にメリットはゼロです。営利企業として協力するでしょうか? https://t.co/HCogiCd1Iu
— ActiveIndex (@ActiveIndex) 2018年4月15日
10億しかないけど全然償還しないインデックスファンドとかうんこファンドがわさわさしてるのは償還と合併によるインセンティブが皆無だからなんだよね。運用会社だけで完結するならともかく、販売会社のデメリットが半端ない。
— ActiveIndex (@ActiveIndex) 2018年4月15日
繰上償還は困難な一方、償還を繰り延べするのは簡単なので近年は5年で償還・人気出たら繰り延べが増えた一方で、公益性()が要求されるNISA・IDECO用だと無期限以外認められない為仕方なく無期限にしてゴミ屑になりる可哀想なインデックスファンドが結構います。
— ActiveIndex (@ActiveIndex) 2018年4月15日
パッシブファンドの最大のリスクは流動性
インデックスファンドの最大のリスクは信託報酬じゃなくて流動性でしょ。パッシブが大きくなりすぎた副作用が次の金融危機時に露呈するのは間違いないよ。VIXインバースETFの即死はその前兆。
— ののわ (@nonowa_keizai) 2018年4月15日
フロントランニングにかかるコスト
TLも落ち着いてきたので、別の観点でインデックスファンドの隠れコストをお伝えしておきます。
— ヒッポAM (@hippoasset) 2018年4月16日
それは銘柄入替やフローを予想してフロントランする人達によるコストで、研究だとSPで20bpくらいです。これは指数値そのものに反映されるので運用報告書を見ても分かりません。悪しからずご了承ください。
ファンド運用の実務に接している(と思われる)方からの臨場感あふれるツイートを読むことができ、大変勉強になりました。
個人的にはこのツイートが一番ツボッたので最後にご紹介します。
投機屋の餌ですね RT @JS_Ecoha そもそもヘボい指数に無理にトラックして何が嬉しいのか謎です。 https://t.co/hPypbJWqKh
— Yoshi Noguchi (@equilibrista) 2018年4月15日
関連書籍
参考記事