藤原久敏『あやしい投資話に乗ってみた』で学ぶ、資産運用を行う上での大事な心構え
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近所の本屋に平積みされていたのが目に止まり、648円(文庫版、税抜)と比較的安価な事もあって購入。
フィナンシャルプランナーである藤原氏が身銭を切って実践した「あやしい」投資話の顛末を綴った本です。
中でも面白かったのは、5章「超高金利の銀行に預金してみた」と3章「和牛オーナーになってみた」の二つのエピソード。
5章は、中小企業向け乱脈融資が原因となり破綻した「日本振興銀行」に預金した際の体験談。
(参考文献:高橋篤史『凋落 木村剛と大島健伸』
3章は、和牛商法の老舗と言われた「安愚楽牧場」に投資した際の経験を綴っています。
(参考文献:斉藤友彦『和牛詐欺 人を騙す犯罪はなぜなくならないのか』
これに限らず、どのエピソードも面白いのですが、
今回は本書から得られる学びを2点紹介したいと思います。
1.「あやしい」投資をどう捉えるか
著者は、
「あやしい」とは極めて主観的なものであり、人によっては一般的な株式投資ですら「あやしい」と感じるが、これは勿体ない。
「あやしい」投資の中には有利なものも混じっており、知識を身につけることで真贋を見極める力が身に付くと説きます。
これは何も投資に限った話ではなく、世渡りの基本的なスキルだと思います。
・人の言ったことを鵜呑みにせず、批判的に検討する。
・なぜそんなオイシイ話を自分に持ってくるのか?
・そのオイシイ話に乗ると、相手は・自分は・なぜ・どのように・得あるいは損するのか?
上記の事項を心に留めて生活すると、(大儲けをすることはなくても)大損する可能性は少なくなるのではないでしょうか。
2.資産運用は銀行預金の徹底比較から始めよ
著者は、FPという職業柄、
「資産運用を始めたいが、絶対に損をしたくない」
と相談しにくる顧客に数多く接するそうですが、そういう顧客に対して
「少しでも金利の高い銀行を真剣に探すように」
とアドバイスするそうです。
その理由を、著者は下記のように述べています。
「(少しでも有利な預金を)真剣に探すことにより、『なぜ、今はこれほどまでに金利が低いのか』という経済のメカニズムや、『銀行は、どこでも同じではない』という金融機関の商品やサービスの多様性など、いろいろ見えてくることもあります」
(161ページ)
これはとても面白い意見だと思いました。
ふつう、リスク性のある(=元本保証ではない)金融商品への投資を始める理由としては、
「公的年金だけでは老後の生活が云々」
「投資を行うことでお金持ちの黄金の羽をどうしたこうした」
といった、将来の不安を煽る系の話か、自己啓発セミナー臭のする語りから始まり、
「ね?預金だけじゃアンタの将来暗いってことがわかったでしょ?
じゃあどうするの?投資信託買うしかないよね?投資用不動産買うしかないよね??いつやるの?今でしょ!」
…という語りで終わることが多く、あまりいい気持ちはしないですよね。
これに対し、
リスク性のある商品への投資ありき、ではなく、
「元本保証の商品を徹底的に比較検討し、商品に対する理解を深めた上で、改めて自分の資産運用を考える」
という考え方は、顧客の現状認識に寄り添った、とても誠実で真っ当な提案であると思いました。
今後、友人や知人に資産運用の相談を持ち掛けられたら、私もこのように回答しようと思います。